なぜ一括請求化で安くAWSを提供できるのか

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Voiced by Amazon Polly

AWSの請求を代行してもらうことで、サポート含めて直接契約より安くサービスを提供してもらえるところがあります。しかし、どのようにして直接契約より安い価格で提供しているのでしょうか。
AWSでは、Amazon S3とデータ転送料金に対してボリュームディスカウント制度が存在します。この制度によって、請求単位で大量の利用があると単価が下がっていく仕組みとなっています。
Amazon S3のデータ保存料金はそこまで強い割引は存在しません(最大10%程度)。
しかしながら、データ転送料金では高い割引率が設定されています。大量のAWS契約を取りまとめるほど、実質的な単価が下がり(割引率が上がり)、結果として顧客にサービスを安価に提供できるようになっているのです。

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ボリュームディスカウントの仕組みと計算方法

AWSに限らず、ボリュームディスカウントに関するコスト計算の基本です。とても勘違いが多いのですが、たまに使用量に記載された階層の料金を全体に適用してしまう人がいます。これは大抵の場合間違いです。

階層ごとの料金をまとめて全体に適用してしまうと、階層の境目付近で逆ザヤが発生してしまいます。

逆ザヤの例として、ドラえもんでの税金鳥があります。999円以下は10%、1000円以上9999円以下は3割、10000円以上は7割というものです。
これをそのまま適用すると、9999円では手取りは7000円であるが、10000円になった瞬間手取りは3000円になってしまい、1円余分に貰っただけで手取りが半分以下になってしまいます。

所得税の計算と同じように、ボリュームディスカウントに関しては階層ごとに計算を行っていくのが正しい方法です。

実効割引率

まず、データ転送料金表を見てみましょう。
AWS米国リージョンでは、月間の使用量に応じてデータ転送料金は次のように定められています。

階層 単価(USD/GB)
1GBまで 無料
1GBを超え、10TBまで 0.09
10TBを超え、50TBまで 0.085
50TBを超え、150TBまで 0.07
150TBを超え、500TBまで 0.05

最新の料金に関してはhttps://aws.amazon.com/jp/ec2/pricing/on-demand/で確認してください。
月間500TBを超える場合は要問合せとなっているため、現実的には月間500TBまでと見なして計算します。また、ここでは1000GBを1TBとして計算します(AWSでは異なる場合があります)。
月間1GB未満のデータ転送に関しては、小容量の通信に対しては課金してないだけと思われるのでここでは無視します。

当該階層ごとに累積して計算するため、階層ごとの料金を調べておく必要があります。
次の表は、当該階層ごとの料金表です。

階層 料金(USD) 階層単位での割引率(約)
1GBまで 無料 該当なし
1GBを超え、10TBまで 899.91 0%
10TBを超え、50TBまで 3400 5.56%
50TBを超え、150TBまで 8500 22.22%
150TBを超え、500TBまで 17500 44.44%

さて、実質的な割引率はどうなるのでしょうか。
面倒なので、境目の部分だけ書いておきましょう。

使用量 料金(割引後,USD) 料金(割引前,USD) 実効割引率(約)
10TB 899.91 899.91 0%
50TB 4299.91 4499.91 4.44%
150TB 12799.91 13499.91 5.19%
500TB 30299.91 44999.91 32.67%

安い階層に乗せられる料金(顧客)が増えるほど、指数関数的に割引率が高まっていきます。月間転送量が150TBでは割引率は5%程度にとどまりますが、500TBを超えると実質30%を超える割引率が適用されます。
おそらく、これより多い階層になるとさらに高い割引率と安い単価が待っているものと思われます。

個人レベルではボリュームディスカウントを受けるのはほぼ無理

先述の通り、ボリュームディスカウントは大口契約向けであるため個人でその恩恵を受けるのはほぼ無理です。
最初の割引階層に乗るまでに月間10万円以上のデータ転送料金を支払うレベルになる上、それを超えたとしても割引率はごくわずかにとどまってしまいます。
例えば、月50TBでは実効割引率は4.44%となりますが、月30TBになると3.70%にとどまります。

ボリュームディスカウントを受けるために無駄にリソースを使用するのは、ただ無駄に料金が高くなるだけです。

ボリュームディスカウントにより安くなった料金はそのまま収益にできるため、顧客サービスとして多少割り引いてもAWSの一括請求で利益を上げられるのです。大量利用で仕入れ値自体が値下がっていることで、その差額を利用できるというのが真相でした。